ソファーの目の前で、何か動いてます。

メジロだ。
可愛い。

親父が庭の椿の枝にゴム糊を付けて、
春にいつも捕まえていたっけ。
雁回山でも登山中に、ガサガサと藪の中で音がしたので驚いて見たら
枝にメジロ捕獲のゴム糊を付けて、潜んでいたオジサンと目が合ったっけ。

奥さんから生米を貰って、窓辺のコンクリに置きました。
もっと近づいてくれないかな。

天草にワカメの茎と湯島大根を買ってくるねと、奥さんに伝えて出発。
その前に、ソファーの目の前にある山に、ちょっと寄ってみる事にします。
山に向かって、宇土高校を横切り、轟水源方面に向かうと
白山入口の看板を見つけました。
初めての場所で地名も知りません。

山から杖を持って降りて来る、登山者らしき人がいました。
山頂に登るのは、この道で良いんですか?
「登山道がグルリと回ってますもんね。
左に向かうと階段が続くから私には無理です。
途中に池もありますよ」
「ミカン農家の軽トラも登ってるから、車で途中まで行けるけど
離合したり、引っ返すときが大変ですよ。」
「右にずっと行くとアホ峠に行きますよ。」
分りました、じゃぁ、ちょっと歩いてみます。

山の名前が分りました。
白山(はくざん)です。

10分くらい進んで、戻ってくるか。

あれーっ、車が通れる道路がある。
せめて、この辺りまで車で来れば良かったかな。

雰囲気が良い山道です。
チョットだけトレッキング気分に浸ろうかな。

ミカン畑が続いています。

頂上まで看板が置いてありそうです。

頂上は、もう直ぐかな?

市街地にはあまり興味無いから
自然観察コースへ行ってみます。
でも、こっちは車で行けたのか。

宇土市方面が見えます。

雰囲気良いです。
自動車、どうにか入れそうですね。
一旦車まで戻るには、もう遠いか。

人が入れない竹林の壁が続きます。

えーっ、うそ。
19キロ?
そんなに遠いの?

帰ろうかな。
天草に行けなくなっちゃうな。

何何?

何があるって?

アホ峠って、この字か。

右に3本の道があります。
下の道は僅かな民家の方へ向かっています。
上の道は山の方へ向かっているのか、少し荒れています。
真ん中の道を選びました。

不安な気持ちのまま、次の看板を探して歩き続きます。
池が現われました。
二人が釣りをしてます。
さすが釣りキチ、こんな処まで来るんだ。
昔の僕みたいだ。

この道に間違い無い。
あのオジサンが池があるって言ってた。
すこし安心して歩き進みました。
でも、平らな道が続きます。
右上の頂上に向かっているような、あの道が気になります。

正面から杖を持った爺様がやってきました。
白山の頂上に向かうのは、この道で良いんでしょうか?
この上の山なんですかね?と指で右上の頂上辺りを指しました。
「なんな?こいな?こりゃミカン山たい。」
「白山はあいたい。」
僕の後方の、谷の上にある丸い頂上を指さしました。
「お地蔵さんから右の道たい。」
「藪ば払ってキレイになっとるが。」
急いで引っ返しました。
往復20分くらいのロスです。
右の道?

看板あった。
入り込まないと見えない看板だ。

これが道?

藪を切り払ってキレイになった道ですか。
なるほど。

ここに来るまでに二人の爺様と、ひとりの婆様に逢ったのですが、

三人とも、妙に長い杖を持ってた理由が分りました。

道が傾いてる。
低い方の縁へ、杖を差さないと歩き辛い。

この辺で少し後悔しました。

そして、覚悟を決めました。

天草には明日行こ。

さっきから鳥の声しか聞こえません。
羽ばたきと葉っぱを揺らす音も聞こえます。

春と秋に、もう一度やって来ようかな。

夏にも来てみようかな。
良い山じゃん。

藪が開いたら、ミカン畑だ。
凄いですね。
こんな山の上まで農家さん、頑張ってるんだ。

スミレです。
やっと自然観察コースらしくなってきたぞ。

コンクリートが見えたので、下りてみました。
駐車禁止?
という事は・・

ここまで車で来れたんだ。

もしかして、ここが出発点?

こんな感じで登ってきたんですね。

もうかなり足にきてますが、もう進むしか選択肢が無いか。

じゃぁ、行くべ行くべ。

大きな鳥の羽ばたく音も聞こえます。

時間的に考えても、この山に居るのは僕だけか。

なんでこんな事になったんだろと考えながら、歩き進みます。

気がついたのは、重い登山靴より、スニーカーが楽だという事です。

登山始めようと思った時に、先ず靴を買いに行ったっけ。
登山靴の機能性も分るけど、僕には要らなかったね。

この山を好きになった理由がわかりました。
岩山と違って、木々に包まれながら登るとなんか嬉しいのです。
なんでだろね。

着いたみたいです。
誰もいない。

こっちが宇土方面か。

コメリだ。

さっきの場所から17分か。
時計も、腕も足も靴もホコリまみれだ。

こっちは何だ?

宇土にダイレックスなんてあったっけ?

何これ?

よく考えたら、僕はこの町の事、殆ど知らないんだ。

あっ、サコダとケーズ電器が見えた。

そうそう、これがあれか?

何々、隠居した細川さんがこの岩に目を刻んで
一日中、碁を差してた?
こんな厳しい山の頂上で?

ホントですか?(疑)

碁盤の目はどうやって刻んだんだろ?

風流と言うんですか。
そうですか。

雁回山が見えます。
今年の春には雁回山に登ってみようかな。
ウドやワラビあるし、オオタニワタリあるし。
ただ、眺望が悪いんですよね。

さて、降り口を探します。
さっきの看板見ると、市街地展望コースなら麓が近そうです。
足跡が付いてます。
あそこが降り口かな。

問題なのは、登山途中で道に迷ったから
下山でもありうるという事です。
来た道を戻るのが正解かもしれません。
でも、まだ天草に行ける。

何だこの傾斜角度は・・
45度あるぞ。
転げ落ちる事が出来るくらいのかっこいい坂道だ。

続きます。