ほらほら見てごらん。
こんなに朝早く歩くと、手術中に眠くならないかな。

指が使える内に、重曹の入れ替えをしなきゃ。
ザルを被せて、オリーブの実が落ちないようにして
水道の水を流し入れます。
実を空気に触れさせないようにします。

30グラムの重曹を、水で溶かしておきます。

入替え終了。
これで三回目です。

この左手の掌を見るのも、これが最後か。

オペ前に、右手に点滴を提げて椅子に座っていると、
院長先生がやって来て、左手の指元をグッと押して
悲鳴をあげた僕に明るく大声で笑って、
「4本もだったら大変だ。僕がしっかり曲げ伸ばし出来るように
してあげるから、頑張って使ってね。」
オペ室に女性看護士さんが3人います。
ベッドに横になり、局所麻酔を打たれて「さぁ、始めるよ。」
麻酔で左肘から先を何も感じません。
時々、左肩が引っ張られます。
何をしてるんだろって言うくらい何も感じません。
「はい、4本とも腫れてたのを取ったからね」と、トレイに乗った4個の
真っ赤な肉の粒を見せました。
鶏のスジの切れ端を一瞬思い出しました。
「今から縫うからね。」「はい。お願いします。」
「はい、終わったよ。見てごらん、ほら、
掌にこんなに指が着くし、ほら反り返る事も出来るよ。」
僕の4本の指を掴んで、折り曲げたり、反らしたりして見せます。
でも、僕が注視してたのは、掌に現われた4本の真っ赤な深い溝でした。
「ほらほら、こんなに反り返るよ。」

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